「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」@森美術館
「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」
森美術館にて 7月13日(日)まで 

1984年にロンドンのテイト・ギャラリーで始まったターナー賞。
今日の現代美術の分野で最も重要な賞のひとつと言える。
50歳未満の英国人または英国で活動するアーティストを対象とし、
毎年4人の候補者の中から1人が選ばれる。
本展は、20年以上に渡るターナー賞の受賞作品を紹介する。
受賞者は皆、今や国際的な活躍を遂げており、この権威ある賞が、
その時々で最も斬新なアートに与えられてきたことが良く分かる。


会場に入ってすぐ、まずターナーの風景画。
それから1980年代の受賞作品の部屋が開けている。
とりあえず1980年代はエネルギーが真っ直ぐにぶつけられている感じ。
捻じれたり、シニカルになったり、視点が分化したりしていない。
ギルバート&ジョージの「デス・アフター・ライフ」、
巨大なパネル作品。若い不満と、もっと上へと躍進せんとする力が、ばちーんと出ている。

1990年代、ヴィデオ・アートも登場。
モノトーンが多く少し暗い印象もある。
ジリアン・ウェアリングの「60分間の沈黙」は、
警察官を並ばせてただじっとさせておいて、
時間の経過とともに生じてくる被写体の戸惑いを見せる。
「サーシャとママ」、母娘の掴み合いの喧嘩を逆回しで再生することで、
突き飛ばすシーンが抱き締めるシーンになる。
つくりは単純なのだけれど、見ていて面白い、実験的で意欲的な作品。

そしてなんと言ってもダミアン・ハースト。「母と子、分断されて」。
それぞれに、左右に綺麗に切断された牛の親子をホルマリン漬けにした作品。
分断されたお母さん牛の間を歩くのはなかなかの体験。
この牛、歩いていた時があったのね。本当に母子の牛なのかしら。
こんなに肉体がきちんと残っているけれど、これはもはや牛ではないのだわ。
こんなにも「死体」を、「死」を、白日の下でまじまじと見つめていいものだろうか。
倫理的に、悪いような気がする。覗き見をしているような。
だとか何だとか色々考えて、まさに、「メメントモリ(死を想え)」ですねえ。
そしてこの、綺麗に分断したり、保存したりする技術にも、同時に驚嘆します。
しかしこのホルマリン液も定期的に交換したり、メンテナンスが大変らしいですね。

2000年以降はちょっと軽くなる感じ。
ヴォルフガング・ティルマンスなんか本当に軽くて綺麗で。
マーティン・グリード、展示室の電気が5秒ごとに点いたり、消えたり。
これはアートなのか、何なのか。
個人的にはこういう問いかけ系はズルイと思うのだが、
ここまで色々と各時代の前衛を見てくると、ありかもね、という気にもなる。
グレイソン・ペリーの壺、これは本当に素晴らしい。
技術も、コンセプトも、そしてご本人(女装)も。
あと、マーク・ウォリンジャーのヴィデオ作品「スリーパー」、
熊の着ぐるみを着たアーティスト本人が夜のギャラリーでうろうろするだけなのだが、
日常をうまく乱して、切り開いている。
あまりにファニーで目が話せず、延々と見てしまった。

面白いものをたくさん見て満足。揺さぶられた。
ひとりで行かなかったのも正解。
ついつい感想を述べたくなる、見終わってから一通りもう一回話したくなる
そういう楽しい展覧会でした。


屋上スカイデッキの公開が先月から始まったそうで
帰りに昇ってみました。
鉄骨とかダクトとか、何に使うのかクレーンみたいなものとか、
良く分からないけど、いかついビルの骨組みが見えるところを登ってゆくのが楽しい。
平日なので空いていて、お天気も良く眺めも良かったのですが
手荷物禁止だったのでカメラも預けてしまい、あらら、という感じ。
でも眼で見たからいいもんね。
2008-05-29 08:33 | 展覧会 | Comment(2) | Trackback(0)
Comment
ターナー展はすごいですよね
自分は係員さんのギャラリー・トークも聞いてみたんですが、牛さんたちのホルマリン漬けには結構、準備するのに時間がかかったみたいですよ やっぱり目玉作品だったからなー
あれは家の寝室とかに置きたいですね(笑
toshizoh INUI 2008/05/31(土) 19:17:33) 編集

コメントありがとうございます。
牛はすごいですよねえ。
準備に時間…かかるでしょうねえ。
しかし牛も、母子でまっぷたつに割られたばかりでなく
空を飛んで極東へ旅するなんて思わなかったでしょうね。

それにしても、寝室に置くのはどうかと…(笑
よきこ 2008/06/03(火) 08:12:03) 編集

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