■イアン・マキューアン『愛の続き』
![]() | 愛の続き (新潮文庫) (2005/09) イアン マキューアン 商品詳細を見る |
科学ジャーナリストのジョーは気球の事故に遭遇し、その現場で奇妙な青年パリーに出会う。
事件後、パリーはジョーに「愛している」と告げ、執拗に付き纏うようになる。
パリーの異常な愛、主人公ジョーが戸惑い、精神的に苦しむ様を描き出す。
イアン・マキューアンの描写が緻密で執拗で、みっちりしていて、ああ小説読んだなあ、という感じ。
確かな技術と思考で骨太に組まれた小説世界に、どっぷり漬かってしまう。
しつこい描写を追って、じりじりと読み進んでいく楽しみがある。
やはり現代においても小説という体裁を取るからには、しっかりと書き込んで読ませて欲しい。
台詞ばっかりとか、多様し過ぎの口語体とか、既に分かっていることばかり書き連ねるとか、
どこかで聞いた風のセンテンスは、読んでいて白けることもある。
物語をこの手で紡ぎだす、というきちっとした意思と技術で創り出されて小説は、読むのが楽しいものだ。
例えばジョン・アーヴィングも骨太な伝統的な小説という手法でしっかり読ませるタイプ。
どの作品も、力強く物語へ引っ張られ、読ませられ、唸らせられる。大好きだ。
比べると、アーヴィングの方が緩急ついているというか、
しっかり書くところは粘り強く書き、省略するところは省略する。
マキューアンは、なにもそこまで…というくらい、素材を隙無く書いていく。
点描で描かれた絵画を離れて見ると、沢山の色が溶け合って「かたち」として見え、
尚且つ細部を思い出すことで幸福感を味わえるような、そういう手法であると思う。
それで、主人公のジョーの戸惑い、苦しみをみっちりと読まされた読者に
最終的に見えてくるのは、新しい角度からの愛の本質についての気付きであり、
正常と異常のボーダーの曖昧さ、不可解さである。
パリーの異常行動は、曇りなき誠実な「愛」によるものである。
「愛」が精神病と近いところにある、という遣り切れなさを感じる。
ちなみに、本書はマキューアンが英国ブッカー賞を『アムステルダム』で受賞する前作。
この『愛の続き』もブッカー賞にノミネートされていたそうである。
「Jの悲劇」の邦題で映画化されている。
ジョー役にダニエル・クレイグ(007シリーズ、初の金髪のボンドですね)、
青年パリー役にリース・エヴァンズ(似合いそう!)。
『贖罪』も「つぐない」の邦題で映画化されており、現在日本でも公開中。
























