「グッド・シェパード」
グッド・シェパード
監督:ロバート・デ・ニーロ
出演:マット・デイモン、アンジェリーナ・ジョリー他
製作年度:2006年
上映時間:167分
原題: THE GOOD SHEPHERD
シネセゾン渋谷にて鑑賞。


CIAの誕生を巡り、1人の男が運命に翻弄されていく様を描いた人間ドラマ。
13年ぶりにメガホンを取ったロバート・デ・ニーロが
監督、製作、出演の3役をこなす。

タイトルの「グッド・シェパード」
―国家の忠犬、というような意味かと思ったら、
新約聖書のキリストの言葉
「私は善き羊飼いである。善き羊飼いは羊のために命を捨てる」
からの引用だそう。

マット・デイモン演じる主人公は
アメリカのための善き羊飼いたらんとして、
冷戦時代のCIA諜報員として高度で危険な仕事に身を捧げる。
国家機密に関わる裏外交という仕事の間断なく恐ろしい緊張が、
個人の生活の深いところまで入り込み、
同僚、友人、家族の絆すら傷つけてゆく。

この時代のアメリカ人の愛国心というものを、
我々日本人には真に理解することは難しいだろう。
主人公のようなエリート中のエリート達の連帯意識と誇り高さ、行動様式も。
そんなふうに国家に身を捧げなくてはいけないだろうか、
と疑問を感じずにいられない。
アンジェリーナ・ジョリー演じる主人公の妻についてもそうだ。
馬鹿みたいに夫を待ったりせず、
家を出て自分の幸せを探せばいいのに、と歯痒く思う。
でも、それ以外の選択肢などあり得ない時代だったのだ。
主人公と偶然再会した昔の恋人が、
二人のあったかもしれない生活について、主人公に話す。
「あなたは詩を続けて、大学の教授になって、
私たちはどこかの小さなカレッジ・シティに暮らしているのよ…」
あったかもしれない未来。
でも、彼はそちらへ行くことはできなかった。
CIA、WASPのエリート集団、そしてアメリカ国家という、
自分が所属するグループから追放されて、生きていくことができるだろうか?

途切れることのない重厚な緊張感が、長さを感じさせない。
20年間の時間を行きつ戻りつ、映画は進む。現在のシーンの後に数年前のシーン、
また戻り、今度は学生時代のシーンが差し込まれる。
けれど観ていて混乱することは殆んど無く、よくできている。
それぞれの時代の状況についても親切な説明は無いが、
観ていればちゃんと分かってくるようになっている。
脚本は「フォレスト・ガンプ」「ミュンヘン」の脚本家エリック・ロスによる。

ただし、冷戦の構造やKGB、ピッグス湾事件、
また、スカル・アンド・ボーンズといったフラタニティについて、
おおまかな基礎知識はストーリーを正確に理解する上で必要。

すごーく面白かったけど、
残念ながら都内での上映は殆ど終了のようです。
2007-11-30 09:11 | 映画 | Comment(0) | Trackback(0)
よしながふみ『愛がなくても喰ってゆけます。』『昨日何食べた?』
愛がなくても喰ってゆけます。愛がなくても喰ってゆけます。
(2005/04/16)
よしなが ふみ

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よしながふみの食べ物ネタは楽しい。

『愛がなくても喰ってゆけます。』で紹介されてるお店は、
実際のところ行ってみたらこれっぽっちも良くなかったり、確かにとても美味しかったり。
なので具体的な信憑性に関しては話半分に読むのだが、
とりあえず、よしながふみの男らしい食い意地にはものすごく共感できる。
豪快で旺盛な食欲と、美味しいもののためなら手間を惜しまないまめまめしさ。
私もそのタイプなので、笑いながらも、その切実さは分かる。
繰り返し読んでしまう一冊。

ちなみに、掲載されている阿佐ヶ谷のbagelというベーグル屋さんは
パンもサンドイッチもキッシュも、本当に何もかも美味しい。


きのう何食べた? 1 (1) (モーニングKC)きのう何食べた? 1 (1) (モーニングKC)
(2007/11/22)
よしなが ふみ

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新刊の『昨日何食べた?』は、
あるゲイのカップルの家ご飯の風景で、
これまたまめまめしい料理手順の描写が堪らない。
こちらも気になる箇所はいくつかあるのだけど
(おねがい鰯は調味料を煮立ててから入れて!
とか細かいことをつい言いたくなる)、それはさておき。
料理が買い物から始まるとこが良い。
そして数品を平行して作る段取りがまた良い。
限られた時間で何品か作る時は、頭がフル回転するもの。
熱いものは熱く、冷たいものは冷たく、
煮物はちょっと冷まして味を含めたいし、
和え物は直前に和えたいし、
全部を良いタイミングで完成させて食べ始められるように、
みなぎるやる気、冷静な計算、高まる食欲。
そして食卓が揃った時の達成感。
ああ、分かる。
全ては美味しいものを食べたい、食べさせたいという
至極単純で純粋な欲求からであることが、
なんだか笑ってしまう間抜けさで愛しいのだ。

手間を惜しまずちゃんと料理してしっかり食べたくなる本。
この本も、ついつい繰り返し読むことになりそう。

ちなみに具体的なやおいシーンはありません。
2007-11-29 08:45 | | Comment(0) | Trackback(0)
クリスマスまであとひと月。
santa

週末、西荻窪の雑貨屋さんで出会ってしまったサンタクロース。
ここ数年、子供向けのフラットな可愛らしさのサンタではなく、
渋いサンタをずっと探していたので、これは嬉しい。
背中側(ちゃんと大きな袋を背負っている)から見ると、
もうサンタなのか何なのか分からないくらいどろどろした色。
悪い子にはプレゼントをくれず、袋に詰め込んで連れ去ってしまいそうな人相が良い。


サンタクロース・レーン(CCCD)サンタクロース・レーン(CCCD)
(2004/11/17)
ヒラリー・ダフ、ヘイリー・ダフ 他

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正しきアメリカン・アイドル、ヒラリー・ダフによる
クリスマス・ソングのオムニバス。
耳になじんだ曲が、ヒラリーの可愛い歌声で、もっと楽しくなる。
クリスマスへ向けてのテンション上げに、もちろんクリスマス・パーティーにも。
まさしくハッピー・チューン。
2007-11-28 08:51 | 未分類 | Comment(0) | Trackback(0)
「グレン・グールド 27歳の記憶」
グレン・グールド 27歳の記憶グレン・グールド 27歳の記憶
(2001/06/25)
ドキュメンタリー映画

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現在、テアトル銀座にて上映中。

孤高の天才ピアニスト、グレン・グールド(1932〜1982)。
21歳で録音したバッハの「ゴールドベルク変奏曲」が
クラシックの常識を破るベストセラーとなり、
31歳で全てのコンサート活動を引退し、
残りの音楽家人生をスタジオでの録音に費やした。
グレン・グールド 27歳の記憶」は、
ナイーブな青年期のグールド27歳の
ピアノ演奏の録音とその周辺事項のドキュメンタリー。
主にカナダの自宅での練習風景などのプライベートを収めた“OFF”と
スタジオ内でのレコーディング風景を収めた“ON”の2部構成。

だらしない服装、行儀の悪いこと、幼稚な仕草、極度のマイペース。
そんなことは演奏の前では霧散する。
グールドが紡ぐピアノの音に包まれると、
ステージ・マナーの悪いことも、
(グールドは、ステージ上で、満員の聴衆を前に、
大指揮者とオーケストラを傍らに待たせて
椅子の高さを30分以上も調整したという。)
録音技師泣かせの唸り声も、
(スタジオで、スタッフがグールドに向かって
コーラスのパートは無いぞ!と軽口を叩くシーンがある。)
グールドのカリスマ性を増すばかりのようだ。
グールドによるピアノ演奏は、
聞くたびに、その時どきの感情を喚起する。
高い技術と素晴らしく新鮮な躍動感が両立し、
聴く者を高みへと連れ去る。

観客は、彼のピアノは強い感受性と知性によるものだと理解する。
そして、録音技師たちの愛ある全力の取組みを得て、
グールドは最高の演奏だけを録音に留め残そうとしたのだと感動する。
グールドはスタジオを子宮に例えたという。
このドキュメンタリーは、グールドというひとりの天才が、
至高の表現を産み落とす様を映し出す。

27歳。
当時のグールドと同い年の今、
スクリーンで観たいと思って出掛けたけれど、
おこがましいことだった。
天才の27歳は、凡人の27歳と比べようがない。
いくつになっても、凡人には、こんな風に
人の魂を揺さぶることはできない。
でも、ひとつだけ、グールドがカナダの自宅の周辺を歩き回りながら、
「お金をためて、35歳までにコンサートは一切引退したい」
と語るシーンは、この天才がまだ若く、自分の思うように生きるために
葛藤していることが見て取れて、胸が締め付けられた。
コンサートの舞台から姿を消した後のグールドは、
金銭には執着せず、友人知人の団体や組織に高額の寄付をしていたという。



バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年デジタル録音)バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年デジタル録音)
(2004/11/17)
グールド(グレン)

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ゴールドベルクは、個人的には晩年の演奏の方が好き。
通勤中にi-podでよく聴く一枚。



ブラームス:4つのバラード、2つのラプソディ、間奏曲集ブラームス:4つのバラード、2つのラプソディ、間奏曲集
(2004/11/17)
グールド(グレン)

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ブラームスも好い。誠実な旋律が、美しく創造的に叩かれていく。
それにしてもジャケット写真。姿勢が悪いこと。
ドキュメンタリー映像でも、
恐ろしく低い椅子(演奏する場所にはいつでも持っていく)に脚を組んで演奏している。



グールドを聴きながらグールドを聴きながら
(2000/08)
吉野 朔実

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平凡を絵に描いたようなヒロインと、天与の美しさとピアノの才能を持った友人。
比べようもないその人に、ただ憧れて止まない。夢中になってしまう。
けれどその憧れの対象はたまたま傍に居てくれただけで、
また遥か遠く、凡人には届かない、想像もつかない遠くへ去ってしまう。
さよならも言わず。
美しい友人はグールドそのもの。

2007-11-27 08:00 | 映画 | Comment(0) | Trackback(0)
「ティファニー 1837-2007」展@東京都庭園美術館
「ティファニー 1837-2007」展
東京都庭園美術館にて12月16日(日)まで
tiffany


展覧会自体にはあまり興味がなかったのだが、
次の仕事に関連が少しあるので、見に行った。
日曜の午前中。かなり混んでいた。
庭園美術館は、展示室が狭くてたくさんあるので、
混んでいると致命的に動線が滞る。

媒体にも出ているファンシーイエローの大粒ダイヤを初めとして、
嘘みたいに豪華なんだけど、混んでいて有り難みが薄れる。
ざーっと見られるものだけ見て出てきてしまった。
単純に人口密度に負けてしまうのだ。
混雑は息苦しい。

フランク・ゲイリーによるティファニーの為のジュエリーデザインには、
革新的でフレッシュな企業精神が見られた。
だが展覧会全体としては特筆すべきものはないように思う。
ティファニーというブランドの夢のおかげで人は入る展覧会だろう。
実際見て、宝石が大好きな人ならときめきがあるかも知れないけど、
そうではないなら、なるほどねと眺めて、それで終わり。
ティファニーはブランドイメージのプロデュースは巧いと思うけれど、
デザイン、クオリティとしてはどうなのか?
アメリカのジュエリーメイカーと思って見るから
フィルターがかかってしまうのかも知れないが、
やはりヨーロッパのブランドとは歴史の重みが違うように感じる。

これを見るならグラフ(今年、ペニンシュラホテルの1階にオープン)を
ウィンドウショッピングした方が有意義、
とは私が勤める画廊のオーナーの感想。
特招会に行くと、例のイエローダイヤ級のものがごろごろ売られているそう。
しかも美術館での展覧会と違って、空いていてゆっくり見られる。
でも、私はグラフには入ってみる勇気も資格もまだありません。
2007-11-26 08:19 | 展覧会 | Comment(0) | Trackback(0)
井伏鱒二『荻窪風土記』 ほか、今週読んだ本
荻窪風土記 (新潮文庫)荻窪風土記 (新潮文庫)
(1987/04)
井伏 鱒二

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荻窪に居を構えた井伏鱒二が、
阿佐ヶ谷将棋会の交流、戦時の暮らしなどについて書いたエッセイ。
荻窪に家を建てるに当たり、兄に建築費を送金してくれるよう手紙の文面を考えたり、
家を建てる段取りをつけるも、博打狂いの棟梁に途中で逃げられ、
再び兄にお金を無心したりする一連のエピソードは、
本人は淡々としており、本当に面白い。
荻窪周辺の様子がかなり細かに書かれていて、
今で言うとあの辺だな、ということが何となく分かるのも楽しい。

武田泰淳が井伏鱒二の描写力をして、
「井伏さんの通ったあとには草も生えない」と言ったというが、
確かに井伏の描写力は半端ではない。
しかしその文章は決して緻密ではない。
飄々と、筆の向くに任せて書き進めたような印象。
話があっちへ行ったり、こっちへ行ったり、また戻ったり、
という気ままというか結構滅茶苦茶な組み立てなのだが、
確かに描写力は素晴らしく、しっかりとした読み物になっている。

井伏の場合、書き手の頭に浮かぶ時点で、既に作品は完成しているのではないか。
ストーリーを思い描き、組み立て、文章として書き出していく、
というプロセスは存在せず、
既に出来上がっている「書きたいこと」「書くべきこと」が、
彼の筆に降りていたのではないか。
筋道の通ったストーリーを構築することなど、
全く瑣末なことであるかのように思えてしまう、強い文章だ。

荻窪は、ここ数年、週に1度くらいは訪れる街で、味のあるいいところだなあと思っている。
井伏鱒二が家を建てた頃から、随分様変わりしたことは間違いないのだが、
井伏鱒二が亡くなったのは荻窪の衛生病院だとか聞くと、
しかもそれはそう大昔とも言えないくらいの1993年、と聞くと、
歴史は繋がって確かにここにあるのだと思う。

明日は西荻窪に古道具など見に行くので、
善福寺川で井伏と太宰治が釣をしたエピソードを思い出すだろう。

ほか、今週読んだ本。

東京骨董スタイル東京骨董スタイル
(2003/04)
木村 衣有子

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東京カフェ案内東京カフェ案内
(2002/05)
木村 衣有子

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ユリイカ 2007年11月臨時増刊号 総特集=荒木飛呂彦〜鋼鉄の魂は走りつづけるユリイカ 2007年11月臨時増刊号 総特集=荒木飛呂彦〜鋼鉄の魂は走りつづける
(2007/11/26)
不明

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春になったら苺を摘みに (新潮文庫)春になったら苺を摘みに (新潮文庫)
(2006/02)
梨木 香歩

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2007-11-24 18:26 | | Comment(0) | Trackback(0)
「SPACE FOR YOUR FUTURE―アートとデザインの遺伝子を組み替える」展@東京都現代美術館
「SPACE FOR YOUR FUTURE―アートとデザインの遺伝子を組み替える」展
東京都現代美術館にて
2008年1月20日(日)まで

六本木クロッシングより、ずっとパワフルでオーガニックな雰囲気で好かった。

エルネスト・ネトの「Humanoid」。参加型。
ふわふわのクッション様のものに体を入れて、背負って座ったり転がったりする。
こういう参加型のアートに実際に参加してみることは、
私にはいつも少し勇気が要る。
今回は友人と一緒だったので、あまり躊躇なくクッションを被ってみたけれど、
ひとりだったら、見るだけだったかもしれない。
変なクッションを背負って起き上がれない、モゴモゴしている、
そこへ、友人がふざけて「じゃあね、あとはひとりでがんばって」と言う。
「待ってー、置いていかないでー」と言う時、
急ぎたいのに、緩慢にしか動けない、それに対する軽い恐怖感。
やさしく重くまとわりつく感触に包まれて転がっていると、
体の自由が利かなくて、なにもかもおっくうになる。
年老いて、年相応に体が衰えたら、こんな感じ?
とも思うけど、別にどこも痛くないし、
これは、年老いるようなこととは違う、甘い怠惰への誘惑だ。

建築家・石上純也の「四角いふうせん」。
現美の大きな吹き抜けスペースに浮かぶ(本当にヘリウムガスで浮かんでいる)巨大な銀色の四角いオブジェ。
ゆらあり、と動く。他のフロアから見下ろしたり、銀色の表面に自分が映っているのが見えたりする。
圧倒的な大きさに、感覚が狂いそうになる。
20メートル近くありそうなので、この美術館以外で展示スペースを確保するのは難しそう。
色々批判もあるようだけど、MOTの存在意義というのは確かにあると思うのはこういう時。

タナカノリユキによる沢尻エリカの100パターンのポートレイト、素晴らしかった。
沢尻エリカの顔は、すっぴんにすると、とても綺麗だけどさほど派手ではないので、
土台として使うと、驚くほどバリエーションがつく。
とはいえ、沢尻エリカ自身が芸達者だから成立した企画だろう。
一枚一枚の写真の背後にストーリーが湧き上がってくるよう。
変容するポートレイトの雄弁さに、
あるがままの人間とか、本当の自分とは何かということを考えてしまう。

SPACE FOR YOUE FUTURE。
自分の身体と、その身を置くスペースとの関係を意識させ、
普段意識しないその感覚を揺さぶられるような展示だった。

帰りに、木場公園で時間を忘れて本気でバドミントン。
すがすがしい一日だった。
2007-11-24 00:10 | 展覧会 | Comment(0) | Trackback(0)
「浜口陽三名品展―光の果物たち―」展@ミュゼ浜口陽三ヤマサコレクション
「浜口陽三名品展―光の果物たち―」
ミュゼ浜口陽三ヤマサコレクションにて
12月16日(日)まで。

レモン、さくらんぼ、西瓜…。
浜口陽三が好んでモチーフとした果物を中心とした展示。
浜口は間違いなく20世紀を代表する銅板画家と言える。
カラーメゾチントの技法を開拓したという、技術的な功績と、
印象的な色使いと、独特の構図。
闇の中からそっと姿を現すような、ひっそりとした存在感。
誰でも見たことのあるモチーフが、
闇の中で、神聖な凄みを見せる。
漆黒の闇から生まれ出たような、
或いは、ずっと変わらず闇の中に潜んでいたような。

とはいえ、無闇にストイックなわけではない。
配置や取り合わせは、どこかユーモラスで、音楽的。
それが万人に親しまれてきた理由のひとつでもあるだろう。

いつ行っても空いているけれど、小さい美術館なので、
これが丁度いい。
小ぢんまりしていて、作品とのあいだに親密な空気が流れるように思う。

今回は、新たに寄贈されて収蔵作品となったという、
伊東深水などの近代木版画の展示もあり。

帰りに、近くで企画をやっていたギャラリーに寄る。
若手作家の版画作品のグループ展。
作家略歴を眺めて、殆ど全員が自分と同い年が年下であることに、
なんとなく愕然とする。
アイドルが年下になったことにはもうとっくに慣れたけれど。
こういう時、自分は年相応になれていないと思う。
2007-11-24 00:00 | 展覧会 | Comment(0) | Trackback(0)
坂本慎太郎『SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006』
SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006
(2006/07/22)
坂本 慎太郎

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ゆらゆら帝国の坂本慎太郎は、井上陽水と並んで、
現代日本の音楽界における最高の言葉の使い手だと思う。
彼の歌詞には、神が降りている。

そして坂本さんの手になる、ゆらゆら帝国のCDのアートワークも、毎回、凄くいい。
『Sweet Spot』の重いメタル感の画面なんか、もう天才だと思う。
タコなんかのかたちがあるものより、かたちのない淀みが好い。
黒と銀の、緩いけど重いせめぎ合い。
深くて暗いエロス。
でもちょっとふざけてる。

そんな坂本さんの作品集。
虚無とポップが隣り合わせ。
ゆらゆらの曲は、重力と空気が変な…薄いような?感じがするけど、
絵もやっぱりこの世のものならぬ薄さみたいなものがあって、
それでいてドスが効いている。

かなり以前に関西で坂本慎太郎原画展があったみたいだけど、
東京ではやらないのかなあ。
やってくれたら行くし、販売していたら買ってしまう。
新アルバムの「空洞です」も音もアートワークも相変わらずよかった。
原画展、可能なら私の勤めてるギャラリーでやりたいけど、
雰囲気と価格帯と客層がまるきり違うし…

坂本さんはもじゃもじゃの頭も素敵だ。
たとえそのもじゃもじゃが、「なるべく洗わないでキープするという天然パーマ」だとしても。
わたしは髪がもじゃもじゃの男の人が好きだ。
朝、ごわごわの髪をぼわーんと爆発させて、もう収集がつかなくなっている様など見ると、
「どうか今日はそのままで!」と言いたくなる。
ちなみにラーメンズの片桐仁のもじゃもじゃも好い。



Sweet SpotSweet Spot
(2005/05/18)
ゆらゆら帝国

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「ロボットでした」「タコ物語」「はて人間は?」など名曲満載。
何年か前にフジロックで聴いた「タコ物語」は素晴らしいアクトだった。
忘れられない。


空洞です空洞です
(2007/10/10)
ゆらゆら帝国

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「めまい」「しびれ」に近い素敵な気持ち悪さ。
ダルさがじわじわ効いてくる。
タイトルの通り、「空洞」なんだけどゴージャス。
収録曲を個別に聴く、というよりは、アルバム全体で「空洞です」という感じ。
アルバム自体が空洞で、ゆらゆらお得意の終わらないループがあって、物語性がある。
来月のライブがものすごく楽しみ。

2007-11-21 10:55 | | Comment(0) | Trackback(0)
伊藤まさこさんの本
おいしくてかわいいおいしくてかわいい
(2004/11)
伊藤 まさこ、渡辺 有子 他

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ちくちく針しごとちくちく針しごと
(2005/07)
伊藤 まさこ

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まいにちつかうものまいにちつかうもの
(2003/09)
伊藤 まさこ

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東京てくてくすたこら散歩東京てくてくすたこら散歩
(2007/05)
伊藤 まさこ

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伊藤まさこさん。実際は、お仕事しているわけで、結構忙しい人なんだろうけど、
生活を楽しむことに貪欲な方なのでしょう。
伊藤まさこさんのライフスタイルものは最近色々読んでいて、わりと好き。
憧れの素敵な奥様ライフ。
おいしいもの・お店・作り方。
大袈裟ではないけれど、本当に美味しそうなものが、
汲めども尽きぬ、という感じで次々出てくる。
ソーイングは、ちょっと真似したくなるような簡単なものが多い。
インテリアや小物類も、シンプルなんだけど、見ているだけで和む。
私は実際に買ったり使ったりするなら、もう少しエッジィなテイストのほうが好きだけど、
既に持ってるものとか、今までに買ってきたものをオールリセットできるなら、
こういうテイストで統一し直してもいいなあ、と思う。

特に、『おいしくてかわいい』は、私の大好きなアイテムともかなりかぶっていて、
(パークハイアットのデリカッセンのリエット、柳桜園茶舗のかりがねほうじ茶、鎌倉の紅谷のクルミッ子、亀屋良永の木賊煎餅、末富の両判…)
でも伊藤まさこさん(と共著者の渡辺有子さん)は、
空き箱・空き缶まで楽しんでいて、読んでいるとほんとに楽しい。
京都のものも、ちゃんと足を運んで買ってるのがえらい。
私は取り寄せたり、デパートなんかで買ってしまう。

「私のライフスタイルを紹介します」で本を書くなんて、誰にでもできそうだけど、
実際にはそのへんの人がそんなもの書いても読み物として成立しないのは、
やっぱりこういうフットワークや貪欲さが、全然違うからなんだと思う。
2007-11-20 14:48 | | Comment(0) | Trackback(0)
福岡伸一「生物と無生物のあいだ」
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)
(2007/05/18)
福岡 伸一

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面白かったから、と人に戴いたので読む。
自分では買わないであろうジャンルの本。
わりと話題の本だったようで、「面白くて一気に読んでしまった!」といったレビューが多かったが、
完全に文系の頭の人間(私だ)は、途中でペースがやや滞った。
それと、人間の肉体は原子レベルでは1ヶ月毎に生まれ変わっているとか、
原子がとても小さく、それに対して人間の肉体が大きいのは、誤差の修正のためだとか、
各媒体のレビューで驚嘆されている、人間の体のダイナミズムに関しては私は既に知っていたので、感動はあまり無かった。
それでも、平易な言葉で、完全に文系の頭の人間でも読み切ることができる。

整然とした事実の積み重ね。手間を惜しまない、言を尽くした解説。思い入れのあるエピソード。
それが繰り返され、読み手を先へと引っ張っていく。
自分と先人の研究と、その意味を伝えたい、という真っ直ぐな思いがある、良書だった。
あたまの体操になる感じ。

「私たち生命体は、たまたまそこに密度が高まっている分子のゆるい『淀み』でしかない。しかも、それは高速で入れ替わっている。」
輪廻転生とか、そういった東洋思想にも近いのかな。
2007-11-19 15:46 | | Comment(0) | Trackback(0)
「六本木クロッシング2007:未来への脈動」展@森美術館
六本木クロッシング2007:未来への脈動」展
森美術館にて2008年1月14日(月)まで。

吉野辰海の犬の彫刻。暴力的で官能的。
内原恭彦の写真。解像度に圧倒される。
飴屋法水の「阿呆」という作品。不穏と不安。パワフル。
良かったのは、この3つかな。

他のは、作れるものを作った、という感じ。
作りたいものを力ずくで作って、見せてくれるような、
「未来への脈動」を実感させるような、力強さが無い。

全体に、見ごたえはそれなりにある。
ひとつひとつはそれなりに面白くもある。
でも未来への脈動というテーマにはそぐわないように思う。
豊かなものを見た、という感じがしない。
豊かとは何だろう。未来への脈動とは何だろう。
希望に満ち溢れているということではない。
飴屋法水の作品(たぶん浅間山荘事件がモチーフ)は希望や安心からは程遠い。
でも、破壊の後に何かもっと違うステージがあるということを想像させる。
どこか、ここではない、次の場所を想定している、そういう大きなパワーだ。
豊かとは、伸びていくための栄養を持っていること。
新たな可能性を孕んでいること。

それと、展示構成。
作品は、案外と整然と並んでいる。
空間が潤沢に取られているからだろうか。
一点、一点を丁寧に鑑賞することができる。
色々な作品を、4人ものキュレイターがそれぞれに集めてきたのだから、
敢えてそれぞれのテリトリーを侵さないように展示したのかもしれない。
クロッシングという名を冠しているのに、
隣り合う作品同士の、相互的な影響が皆無というのは矛盾を感じる。

私の感性が鈍いといわれればそれまでだけど、
未来への脈動は感じなかった。

でも一緒に行った人と、作品について話したり、体験しながら、
ゆっくりしたペースで見るには森美術館はいいところ。
そういう意味では楽しかった。
お天気も良かったし、それほど混んでなかったので、
展望台フロアでも、窓の外を眺めながらのんびりしてしまった。
MUSEUM CAFE マドラウンジは、自然光がたっぷり入って気持ち好いし、席がゆったりしていていいと思う。
2007-11-19 08:50 | 展覧会 | Comment(0) | Trackback(0)
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